この人に聞く

親心の幸福論
埼玉県教育委員会委員長 松居 和 氏(音楽プロデューサー)

 平成二十一年十月七日、家庭教育専門委員会で講演された内容をまとめたものです。

 松居和氏の高い見識と普段着の話がコラボしたとても愉快な講演でした。

【写真】松居和 氏

1 子育ては親心を育てる

 「アメリカでは三割の子どもが未婚の母から生まれる。スウェーデンでは六割です。日本では出来ちゃった結婚という言葉があります。日本人は出来たら結婚するんです。嬉しいですね。そして子どもを媒介に親心が根付いていくのです」

 海外の子育ての現状を判り易く話しています。そして親心の大切さを訴えています。

2 親子で行動する。これがいいんです。動機が不純でもね

 「受験勉強が如何に素晴らしいかを簡単に理解しようと思ったらテレビ番組に幸せ家族というのがあるんですね。」

 父親が家族を代表して世の中に役に立たない事に挑戦する。まったく意味のない挑戦に家族が協力しあう。この無意味な行動が家族の絆を深めていく。言われてみればまったくそのとおりです。

3 神が0歳児をあたえてくれる

 「宇宙は何で我々に0歳児を与えてくれるのか、この絶対的弱者を、何で宇宙は我々に与えてくれるのか。不自由になれよ、幸せになれよ。」

 一見、矛盾しているような話を判り易く話してくれました。0歳児という神があたえてくれた命を親が必死になって育てることで大きな絆が生まれるということをユーモアたっぷりに話してくれました。

4 インド人のカレー

 ある母親が自分はカレーが好きだからといってカレーばかり子どもに与えるのはいかがなものか、と言う園長がいました。

 「でも先生インド人は毎日カレーばかり食べていますよ」といった後、二人は目を合わせ大笑いをしたそうです。

 そして二人は保育界における悟りを開いたと話されました。まさに人間の奥の深さを話されました。

5 社会に絆が生まれる時

 松居和氏は幼稚園・保育園での講演が多く父親の役割を判り易く話しているそうです。

 そして子どもを通して親子の絆、社会の絆を作っていく。人間に根っこのところで大切なものを高P連の皆に話されたことに深く感謝する次第です。ある幼稚園のお話です。

 「ある幼稚園のバザーであるお父さんが綿菓子を売ることになりました。父親達が集まって綿菓子は一本ずつにしようと決めました。その父親の息子が、僕どうしても二本欲しいと言ったそうです。お母さんはお父さんに聞いてごらんと言ったんですね。さあ順番が来て子どもはお父さんに言いました。僕二本欲しい。

 そしたら父親がね、「内緒だぞ」と言った。そうしたらその後にいた子どもも二本欲しいと言いました。父親が、その子にも「内緒だぞ」と言って綿菓子を手渡した。」

 この子の母親が園長に夫のこの言葉と表情に感動したと報告したそうです。夫婦は子育てをしながらお互いの人間性を確認しあう。そして、人間性を引き出してくれるのが幼児たち。そこから大きな、大きな絆が生まれてくるという。一本か二本も大事だが、もっともっと大きな人間の絆を選んだことに、この講演の大きな意義を感じました。

普段着の判り易い話の中に親が感じる幸福とはなにか深遠なる極意を感じさせる愉快な講演会でした。心より松居和先生に感謝申し上げます。

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