いのちのシンポジウム

越谷北高校PTA会長 佐藤 景子

 東京マラソンランナーは3万人。これと同じ数の人間が1年間に自殺しているというこの現実。真剣にならざるを得ないシンポジウムでした。

【写真】シンポジウムの様子 安全互助会、PTA連合会主催の「いのちのシンポジウム」が十二月八日、埼玉会館にて開催されました。開会行事では、安全互助会〓田皓章会長が挨拶に立ち、四年前の第一回シンポジウムから今回に至るまで、経過と開催の意義について、いのちの大切さに対する熱い思いを交えて述べられました。次いで高P連山田明美会長からは、子どもの自殺という重いテーマですが、保護者としてしっかり受け止め、学び・考え・行動しましょうと、力強い挨拶がありました。

 シンポジウムに先立ち、パネリストのお一人である首都大学東京教授宮台真司氏より「青少年の心の孤独」という演題で基調講演が行われました。ご自身の経験やこれまでの研究成果をもとに、社会学者の立場から、後を絶たない自殺と密接に関係する社会の状況、若者文化から学校の役割、現在の社会の在り方について話されました。時には刺激的とも思える言葉を交え現在の社会が抱える問題を鋭く分析し、どう変えていくのか提言を含め示唆に富む講演でした。シンポジウムは、パネリストとして宮台真司氏、清水康之氏(NPO法人ライフリンク代表)、竹中麻理子氏(埼玉県学校カウンセラー)コーディネータに町永俊雄氏(NHKキャスター)を迎え行われました。最初に、自らがNPO法人ライフリンクを立ち上げ自殺対策に取り組んでいられる清水氏からご自身の高校中退に始まり、NHKのディレクターとして自殺をテーマに取り上げた番組作成をきっかけに、自殺対策の「つなぎ役」となって活動していこうとNPO法人を立ち上げ取り組んでいる様子を聞きました。この中で「自殺者が年3万人とは東京マラソンの出場者全員です」とマラソンの様子を写した画像を見ながらのお話、自殺対策に精力的に取り組んでいられることが理解できました。また、大人がどう生きるかで、若者に「長く生きていると世の中捨てたものではない」とのメッセージを伝えることができると結ばれました。次いで埼玉県のスクールカウンセラーとして生徒・保護者・先生方との相談を通して子どもや親の抱えている問題に向き合っている竹中氏からは、高校生は他との比較の中で自分を作っていく。また「親が子どもの問題を早く解決したいと思うのは、自身がその不安に耐えられないから。聞いてあげて見てあげる。一緒におたおたして下さい」とありました。

 最後に宮台氏から、「感情が安定できる場所を作ることが大切、それは家庭です」との話もありました。NHKキャスターとして、自殺をテーマに取り上げた番組に係わってこられた町永氏の適切な進行でシンポジウムが終わりました。

 この後、三校の保護者からパネリストに対しての質問がありました。会場全体が真剣に受けとめ真剣に考えることができました。充実したシンポジウムでした。聞き終わって自殺者の多いことに心が痛みました。保護者として家庭のあるべき姿を考えながら子どもとの会話を大切にしたいと思いました。

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