教育活動紹介

工業高校ならではの教育活動

埼玉県立川越工業高等学校 校長 清水雅己

はじめに

 本校は、明治40年に埼玉県立川越染織学校として設置が認可され、今年創立百十一年目を迎えた埼玉県で最も伝統と歴史のある工業高校である。現在、全日制課程には、デザイン科、化学科、建築科、機械科、電気科の五科が、定時制課程には、工業技術科(機械・電気)、普通科が設置され、合わせて千人以上の生徒が学ぶ埼玉県で最も規模の大きい工業高校である。これまで、ものづくりニッポンを代表するソニーのウォークマンやJR東日本のスイカの開発において中心的役割を果たした技術者をはじめ、戦前戦後の日本の工業化を支える多くの人財を輩出してきた。また、埼玉県のマスコット「コバトン」は、本校の授業中でその産声を上げた。

課題研究

 本校の名前を一躍有名にしたのが、平成27年11月に、秋田県由利高原鉄道で行われた乾電池で動く電車で世界最長距離のギネス世界記録を打ち立てた電気科の「課題研究」の取組みである。課題研究とは、普通科高校における「総合的な学習の時間」に相当する科目であるが、工業高校では、三年間の専門的学びの集大成として取り組む重要な科目であり、

  1. 課題の設定
  2. 情報の収集
  3. 整理・分析
  4. 企画・設計
  5. 製作・研究
  6. 発表・質疑応答
  7. まとめ・表現

を基本的な探究のプロセスとし、失敗や成功を繰り返しながら実際にものづくりや研究開発を行っている。その教育活動の中では、企業、大学、研究機関などの協力のもと、社会の第一線で活躍している技術者や研究者から直接指導・助言を仰ぐなど、生徒の好奇心や探究心を刺激し、よりハイレベルな学びに誘う教育活動を展開している。

おわりに

 本稿で紹介した取り組みは、本校における「課題研究」における取り組みの一端であるが、社会と連携したこれらの取組みは、まさに「社会に開かれた教育課程」を現実のものとするものであり、工業高校でなければできない工業高校ならではの教育活動である。本校は、これからも、校訓「誠実・勤勉・創意」のもと、工業教育の王道を歩みながらも、常に進化し、本校の目指す学校像「地域や産業を支え、新しい時代を切り拓く、創造性豊かな実践的技術者を育成する」のもと、新しい時代が求める技術者を育成していく。

川口市立高等学校の開校

川口市立高等学校 校長 井上清之

 川口市立高等学校は、これまでの市立川口総合高等学校、川口高等学校、県陽高等学校の三校を再編統合して、平成30年4月に開校しました。

 川口市は、市の三大プロジェクトの一つとして新しい学校づくりに取組んでおり、本校を小中学生が憧れ、市民が誇りに思う川口市のリーディング校と位置づけています。

 本校は、二〇二〇年の大学入試改革や主体的・対話的で深い学びを目指す次期学習指導要領など、大きな教育改革の進む中、「新たなタイプの進学校」「文武両道の具現化」をコンセプトとしています。各学年、理数科一学級、普通科十一学級、計三十六学級、県内公立高校として二番目の規模の学校です。また、普通科の中には文理スポーツコース三学級、特別進学クラス三学級を設置しています。

 本校は川口市唯一の市立高校として、市の全面的なバックアップを頂き、新たなタイプの学校づくりを進めています。開校3年目にはアリーナ棟、4年目に人工芝グランドが完成し、教育施設が全て整い、附属中学校もこの年に開校する予定です。

人材配置

 県の基準を上回る教職員配当に加え、川口市独自にネイティブのCIR(国際交流員)四名、東大コレフとの連携によるアクティブラーニング支援員二名、ICT支援員一名の常駐、その他にも自習室に大学生チューターなどを配置し人的環境の充実を図っています。

ICT環境

 国のICT5か年整備計画を先取りし、すべての教職員がタブレットPCを持って授業を展開できるよう、全教室にプロジェクターとWiFiを設置しています。また、「空間UI」という最新鋭のアクティブラーニング室も導入し、大学や研究機関と連携を図り、新しい学習スタイルの研究も進めています。

長期留学

 本校は目指す生徒像の一つとしてグローバル人材の育成を掲げています。今年、川口市は、アメリカ・オハイオ州フィンドレー市と友好都市の提携に調印しました。その連携の一環として、次年度よりフィンドレー高校へ約十か月の長期留学生を派遣する予定です。

 本校は、旧三校の在校生が進級する形で統合しました。PTAも数年前から三校が連携を図り、統合の準備を進めてきました。今後も、旧三校が築き上げてきた伝統と実績に新しい風を吹き込んだ学校づくりに邁進していきたいと考えています。

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