小・中学生の頃から、乳幼児の世話をする大人を身近で見たり、親戚や近所の赤ちゃんの世話をさせてもらうことで、人は、親としての在り方を学びながら、親となるための力をつけてきました。しかし、最近では乳幼児を持つ半数の親が、子どもを抱っこしたり、おむつを替えたりした経験のないまま、親になっています。
現在の親は、子どものころから「親」を学ぶ準備もできずに成長し、実際に親となると、氾濫する情報の渦の中で、我が子にとって良い親になろうして悩んでいます。過干渉、放任や虐待などはその負の一面です。そこには、子育ての前に、自分が親として育つ過程でつまずいてしまっている現実があります。そのため、子育て中の親の「親としての力をつける学習」と、近い将来親となる、中・高校生の「親になる準備の学習」を積極的に作っていくことが求められています。
「親の学習」は、埼玉県が独自に開発した「親の学習」プログラムを活用して行う「親」の学びで、中・高生対象の「親になるための学習」と子育て中の親を対象とした「親が親として育ち、力をつけるための学習」から構成されています。そして、特に、この学習は参加型であり、体験的な活動を通して行います。
例えば、高校生では、家庭科(家庭分野)の授業において、「親の学習」のプログラムを活用して、乳幼児とのよりよい接し方を具体的事例を取り上げて学ぶことができます。この学習は、近い将来「親」になる準備に役立つだけでなく、自らの成長とそれを支えてくれた親への感謝の気持ちを醸成することにもつながります。
一方、子育て中の親が行う「親が親として育ち、力をつけるための学習」は、講演会のような座学ではなく、参加型の学習で行います。そこでは、グループでの話し合いやロールプレイングにより、さまざまな意見などを参考にし、自分の家庭に合った子育てのヒントを見つけます。
この「親の学習」を体験した多くの参加者の方からは「たくさんの保護者の方の考えを聞くことから、自分の子育てをふり返ることができたり、同じ悩みをもつ方と交流ができたりしてよかった」と好評を得ております。
この「親の学習」の取組を御理解いただくとともに、高校のPTAにおいても「親の学習」講座を積極的に展開していただき、親も子も共に成長するきっかけとしていただきたいと思います。